Rewriteは何故隠れた名作と化してしまったのか

KANON,AIR,CLANNAD,リトバスその他多くの作品を送り出してきたノベルゲー業界の老舗ブランドKeyに一作風変わりな作品が存在する。2011年に発売された全年齢対象ゲーム「Rewrite」である。

CLANNAD,AIRは今でも語り継がれる名作だ。しかしこの「Rewrite」はKey作品としては話題になりにくい所謂マイナー作品である。しかし、万人受けこそしないこの作品だが,私はとても良くできた名作だと思う。

という訳で今回は何故Rewriteが今日の評価を得ることになったかを考えていく。

Rewrite及びFateのネタバレ有りの為未視聴の方はブラウザバック推奨

作者3人中2人が外様ライター

このRewriteが今日評価を勝ち取れていない最大の要因はKey作品として生まれたことだと私は思う。これはKeyにブランド力が足りないという意味ではなく、Keyが出す名作を期待していた古参ファンに中々刺さらなかったのだ。

というのもシナリオを担当した田中ロミオ(小鳥√,朱音√,Moon,Terra)、都乃河勇人(ちはや√,静流√)、竜騎士07(ルチア√)の3人の内都乃河氏以外の2人はKey所属のライターではない。

つまり既存のKeyの泣きゲー。麻枝准氏らとは異なる作風になりやすいことに加え、各ルートでシナリオ担当の違いによるギャップが発生してしまうこと(ここが魅力でもある)で古参ファンに「これは期待していたKey作品ではない」と嫌煙されてしまいがちなのである。

竜騎士07氏は「ひぐらしのなく頃」の様にホラー要素を含んだ謎解きシナリオに定評のある人物だ。また田中ロミオ氏は「家族計画」や「加奈」そして「Cross♰Channel」など社会に溶け込めない主人公の葛藤と成長や張り巡らされた伏線回収による作品の奥深さが魅力です。つまりブランドの方向性とライターのシナリオ適正にややギャップがあるのが一つの要因である。

テーマは環境問題と人類の停滞

CLANNADは家族愛、リトバスは友情などKey作品には身近な人物との絆という点がテーマになる傾向があるのに対し、Rewriteがテーマとしているのは「地球環境と人類」である。つまり物語のスケールが歴代作品比で壮大であるのだ。

Rewriteは序盤学園生活パートが続きますが、物語が進むと超人と呼称される超能力者と魔物使いとの戦闘描写も増えてきます。地球資源が枯渇し滅びの運命にある人類がどの様に歩んで生きるか、という命題を2011年にギャルゲーのテーマとした田中ロミオ氏のセンスは流石であるが、歴代の作品に比較するとKeyの学園ラブコメとしては壮大すぎるテーマ、膨大な文章量という点でプレイヤーを選ぶというのは否めない。(故に田中ロミオ作品勢とは相性〇)

Fateの存在

Rewriteという作品にはFateの存在を想起させる要素が所々存在する。

  • 両主人公にとっての先駆者咲夜と英雄エミヤの存在
  • 月篝の命の理論図がFateの魔術回路(史郎)に酷似している
  • 朱音√における地竜討伐戦での剣製演出

しかしギャルゲー(エロゲ)において過去の名作をオマージュすることは度々あることで、例えばマブラヴの吉岡氏はエヴァンゲリオンを意識して作ったと話しているし、そのマブラヴに影響を受けた進撃の巨人も人気作として世の評価を勝ち得ている。今回RewriteのキャラデザがFateを意識していたとしても、オマージュ自体は問題ではないのだ。

この場合の「Fateの存在」とは2011年Rewriteが発売された同年Fate/Zeroがアニメ化されたことにある。

元々人気作であったFateに更に注目が集まったことでRewrite評価の際にFateの存在がどうしても脳裏をよぎる。そんな風潮があったように私は思う。

TVアニメの尺

TVアニメ「Rewrite」は一期13話+二期10話の計2クールから構成されている。

しかしこの作品の魅力を余すことなくアニメとして表現するにはその倍の尺は欲しいところである。ただ計23話という中で天衝監督率いる制作委員会はよくまとめ上げたと私は思います。原作勢を想定して作るなら一期のオリジナル√突入は良いアイデアですし、二期のラストだけでもアニメ化された価値が十分にあったと私は思います。(願わくば円盤特典で石の町が見れたら良かった)

アニメ人気の過熱でいわゆる神アニメが増産された結果、昔ながらのゆったり2クールで楽しむ作品や考察込みで楽しむ作品は評価を勝ち取りにくくなっている様に思う。ギャルゲーに対するプレイヤー&視聴者の熱意が昔に比べ落ち着きを見せる中、既存のブランドイメージとは異なるボリューミーな作品は広く評価されることは厳しいのは事実だ。

今後再評価される可能性は十分ある

今後我々が環境問題によって人類の存続を意識せざるを得ない機会が訪れた時、即ちこの作品のテーマが真に人々にとって無視できなくなったタイミングがこの作品が評価される時期ではないかと思う。

Rewriteは2011年に発売した「環境問題と人類を主題とした作品」としてはとてもハイレベルで魅力的な作品です。やがて再評価されるべき作品として私はここに期待を込めて終わりたい